ロシアの古都スーズダリを歩く(5)2011/11/16 20:46

 町の北端までやって来た。そこに高い城壁のような塀をめぐらしたスパソ・エフフィミエフ修道院(Спасо-Евфимиевский монастырьスパサ・エフフィーミエフスキー・マナストゥィーリ)が巨大な姿を現した。スパソ・エフフィミエフ修道院は、世界遺産に指定されている。

 1352年に創建されたが、17世紀にリトアニア・ポーランド連合軍に破壊された後、堅固な城壁のような塀で防備を固める修道院になった。塀の高さは8m、その長さは1.5km、12の塔屋を備える。

 スパソ・エフフィミエフ修道院の南側の塀である。レンガを積み上げて、表面を漆喰で塗り固めたように思えるのだが、その漆喰にベンガラでも混ぜて赤い色を出したのだろうか? 
スパソ・エフフィミエフ修道院南の城壁

 南側の壁に沿って西へ歩いていくと川が出現する。Каменка река(カーメンカ川)である。川の向こうに大きな修道院が見える。
川向こうのパクローフスキー修道院

 修道院の名称はПокровский женский монастырь(パクローフスキー女子修道院)。修道院として現役で活動中である。
川向こうのパクローフスキー修道院

 スパソ・エフフィミエフ修道院の西側の塀に沿って北へ向かって歩いていく。この壮大な壁は明らかに外敵に備えた構造になっている。
スパソ・エフフィミエフ修道院の西壁

 スパソ・エフフィミエフ修道院の北端に達した。修道院の壁と民家の間の空き地にヤギがつながれていた。民家の人が飼っているのだろう。ヤギの乳を利用するために飼っているのだろうとその場では思ったが今見るとオスのようだ。繁殖用?愛玩用?肉用?カシミヤ用?
民家で飼われていたヤギ

 ロシアの秋には、рябина リャビーナ(ナナカマドの一種)の赤い実が似合う。今回の旅でもリャビーナの赤い実を各所でよく見かけた。

 よく知られたロシア民謡にЧто стоишь качаясь тонкая рябина シトー・ストーイシ・カチャーヤシ・トーンカヤ・リャビーナがある。直訳すると「どうしてお前は揺れながら立っているのか?細いナナカマドよ」となるが、日本では「小さいぐみの木」として知られる。
 またУральская рябинушкаウラーリスカヤ・リャビヌーシカ、日本で「ウラルのぐみの木」として知られる曲も有名だ。

 リャビーナはロシア人にとって大変親しみのある樹木なのだ。
民家の庭先でナナカマドが赤い実を付けていた

 スパソ・エフフィミエフ修道院の北側の「城壁」である。
スパソ・エフフィミエフ修道院の北壁

 北側の壁に沿って東へ向かって歩く。「城壁」の各所に設けられた塔には銃眼のような穴が見られる。戦いに備えたものだろうか。
スパソ・エフフィミエフ修道院北壁の塔屋

 北側の「城壁」と向かい合って民家が続く。ニワトリを飼っている。先ほどのヤギといい、生活の足しにするためだろう。
ニワトリを飼う民家

 民家の板壁がエメラルドグリーンに塗られている。その前に黄色く色づいたカエデ系の樹木が立っている。対比が美しい。花壇も造られて手入れが行き届いている。
青い民家の外壁に黄葉が映える

 広大なスパソ・エフフィミエフ修道院の周囲を1周して正門前に戻ってきた。正門の大きく高い塔屋の前に小公園があり、中を覗くと記念碑が立っていた。碑文は「ドミートリー・ポジャールスキーへ感謝を込めて」。胸像の台座の両脇から修道院のイコンが望めるように記念碑は設計された-と判断したのだが。
 1600年代初頭、ロシアは皇帝の跡継ぎも途絶え、大飢饉が続き3分の1の民が死亡するような惨状で、国力は地に落ち国家機能も失っていた。弱体化したロシアにカトリックのポーランド・リトアニア連合とプロテスタントのスウェーデンが襲い掛かり好きなように蹂躙されていた。モスクワをポーランドから取り返すために立ち上がったニージニー・ノヴゴロドの肉屋クジマ・ミーニンが組織した第二次国民軍の司令官に迎えられた最貧下級貴族出身のドミートリー・ポジャールスキーДмитрий Пожарскийは1611年11月、モスクワをポーランドから取り戻した。
 ドミートリー・ポジャールスキーは、ここスパソ・エフフィミエフ修道院に埋葬されている。
ドミトリー・ポジャルスキーの記念碑

 スパソ・エフフィミエフ修道院の回りを一周したが、まだ内部の見学はしていない。しかし時刻はすでに午後5時半になったので、明日出直すことにして、レーニン通りを南下してホテルへ向かう。
 ул. Ленина 123 (レーニン通り123)の建物が渋い状態に古色を帯びていたのでパチリ。
風雪に耐えたロシアの民家

 レーニン通りに立っていた掲示板。張られていたチラシを読むと、不動産情報、靴の閉店セール、試験対策の外国語学習塾など。
ロシア・スーズダリで、掲示板のチラシ広告

 レーニン通りを挟んで反対側(東側)の公園では、一部の樹木が色づき始めていた。ロシアでは(モスクワ周辺では)10月に入ると急速に木々が色づいてくる。明日は10月1日だ。
9月30日、ロシアの「黄金の秋」始まる